スポーツや日常生活の中でひざを痛め、「半月板損傷」と診断された方の中には、「手術ですぐに切除するしかないのだろうか」「このまま痛みが残ってスポーツができなくなるのでは」と不安を抱えている方が少なくありません。
近年、整形外科の領域では、ご自身の身体が持つ修復力を活かす「再生医療(バイオセラピー)」が大きな進化を遂げています。
本記事では、国内初となる半月板損傷を適応症とした再生医療等製品「セイビスカス®注」について、その仕組みやメリットを詳しく解説します。
セイビスカス®注とは? 半月板損傷治療の画期的な新薬
「セイビスカス®注(SEVISCUS)」は、富士フイルムグループ(富士フイルム富山化学)が開発した、国内で初めて製造販売承認を取得した滑膜由来間葉系幹細胞を用いた再生医療等製品です。整形外科領域における新たな治療の選択肢として、多方面から大きな注目を集めています。
半月板を「温存(Save)」するために生まれた治療
製品名の「セイビスカス」は、国際的な整形外科のスローガンである「Save the Meniscus(半月板を温存しよう)」に由来しています。かつては傷ついた半月板を切り取ることが一般的でしたが、「いかに半月板を残して機能を維持するか」という治療理念の転換を象徴するネーミングとなっています。
自分の細胞を使った「自家培養細胞治療」
セイビスカスは、他人の細胞や人工物ではなく、患者様ご自身の身体から採取した組織を利用します。
膝関節の内側にある「滑膜(かつまく)」と呼ばれる組織から採取した細胞を、専門の特定細胞加工製造施設(CPC)において厳重な管理のもとで培養・増殖させ、再び関節内へ投与する高度なバイオセラピーです。
なぜ「切除」ではなく「再生」が重要なのか?
半月板は、ひざの関節にかかる衝撃を和らげるクッションの役割を果たしています。しかし、血流が乏しい組織であるため、一度大きな損傷を負うと自然治癒が非常に難しいとされてきました。
従来の半月板切除術が抱える課題
従来、痛みの原因となっている損傷部位を切り取る「半月板切除術」が多く行われてきました。しかし、半月板を切除してしまうと、ひざ関節の衝撃吸収能力が低下し、数年〜数十年後に変形性膝関節症(OA)へと移行するリスクが高まることが懸念されてきました。
スポーツへの早期復帰や、将来的な自身の足での歩行を考えたとき、「できる限り半月板を切らずに残したい」という患者様の願いに応えるアプローチが求められていたのです。
自己細胞による「本来の機能の修復」
セイビスカス治療では、培養された大量の間葉系幹細胞が持つ分化能や組織修復促進作用を利用し、傷ついた半月板自体の治癒・癒合を目指します。一時的な痛みの緩和ではなく、組織の根本的な修復を促す点が最大の特徴です。
セイビスカス治療の実際の流れ(初診から投与まで)
再生医療と聞くと大掛かりな手術を想像されるかもしれませんが、身体への負担を抑えたスムーズなプロセスで進められます。
初診・適応評価
医師による診察と、MRIやレントゲンなどの画像診断を行い、滑膜幹細胞治療が適応するかを慎重に判断します。治療のメリットやリスクについて十分な説明を受けた上で決定します。
滑膜組織の採取(日帰り)
局所麻酔のもと、エコーガイド下でごくわずかな滑膜組織を採取します。数ミリ程度の小さな切開で済むため、入院は不要で日帰りが可能です。
専門施設(CPC)での培養・増殖
採取した組織は専用の施設へ安全に輸送され、約2〜3週間かけて治療に必要な数千万個規模の細胞へと大切に培養・増殖されます。
患部への注射と定期検診
十分な数に育った細胞を、外来の処置室にて関節内へ注射します。注入後は定期的な診察やMRI撮影を通じて、定着と修復のプロセスを丁寧にモニタリングします。
こんな方にセイビスカス治療(再生医療)が選ばれています
▼ セイビスカス治療が適した方の主な特徴
- 半月板損傷と診断され、将来的な変形性膝関節症の発症を予防したい方
- 「手術で半月板を切除したくない」「自分の組織をできる限り温存したい」と希望される方
- 従来のヒアルロン酸注射や保存療法では十分な効果が得られず悩んでいる方
- アクティブなスポーツや日常生活の質(QOL)を高く保ち続けたい方
まとめ
半月板損傷に対する再生医療「セイビスカス®注」は、これまで「切り取るしかなかった」あるいは「痛みを抱えながら我慢するしかなかった」多くの患者様にとって、ご自身の細胞でひざの健康を取り戻すための力強い選択肢となります。
当クリニックでは、一人ひとりの症状やライフスタイルに寄り添い、MRI等の精密な画像診断に基づいた最適な治療プランをご提案しております。ひざの痛みや半月板のトラブルでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。


